EVERGREEN

好きな人が物書きなもので、つい。

旅人に花を

 
『世界で一番バカな旅人』という話を思い出していた。
 
私の聖書のひとつ、漫画『フルーツバスケット』に出てくる創作童話。
 
 
バカな旅人が旅をしていました。
 
その旅人は、バカだから、人にすぐ騙されます。
 
旅先の町で、街の人の「お助けください。」という声に素直に騙されては、
お金や、服や、靴を騙し取られてしまうのです。
 
でも、旅人はバカだから、「これで助かります。」という街の人の嘘の言葉に感激して、
「お幸せに。どうかお幸せに。」と言って快く差し出しました。
 
 
とうとう裸で一文無しになってしまった旅人は、
さすがに街を歩けなくなり、森の中に入ります。
 
その森には人を喰らう魔物が住んでいました。
 
魔物たちは、旅人の体を食べたくて、うまいことを言って騙します。
 
もちろん、旅人は騙されて、脚を一本、腕をまた一本とあげてしまいます。
 
 
結局、旅人は頭だけになってしまい、最後の一匹には、目をあげました。
 
最後の魔物は、旅人の目を食べながら、
「ありがとう。お礼に贈り物をあげます」と言ってなにかを置いていきました。
 
その贈り物は、一言「バカ」とだけ書かれた紙切れでした。
 
けれど旅人は、『ありがとう。ありがとう。初めて贈り物をもらったよ。嬉しい。本当にありがとう。』と、失くなった目からポロポロ涙を流して、死んでいきました。

 

 

 
 
そんな旅人を、知っている気がした。
 
 
つい最近まで4人で旅をしていたひと。
仲間のことを心から愛していたけれど、
今の旅ではできないことがあるからと言って、
ひとり別の道を選んだひと。
 
どこまでも無垢で、まっすぐで、ひたむきで、
嘘がつけなくて、だから危なっかしくて、
人を信じやすくて、誰にでも優しくて、
本当は弱いくせに強がりな、
誰かを喜ばせることばかり考えているひと。
 
 
 
6月23日。
 
会見を視聴する前、ファンである自分の中にあった一番大きな疑問は「何故STORYまで待てなかったのか」だった。その疑問はFRIDAYの記者から投げられた。弁護士の先生がマイクを取り、詳しくは「話せない」、ただし彼の本意ではない、ということだけがわかった。メンバーとの話し合いも持てない状態だった、とも語られた。
 
彼は何度も何度も繰り返し、おそらく取材陣には辟易されるほど、ジャニーズ事務所への感謝と、NEWSへの愛、NEWSファンへの愛を語った。でも私にはそれこそが彼の一番伝えたいこと、忘れられては困ることなのだと十二分に伝わった。
 
 
 
退所を決意するくらいだから、それなりに事務所に対して思うところはあったはずで、
それに至る流れだって、端からみたら円満ではないことくらい容易にわかる。
 
 
それでも彼は誰も批判しなかった。週刊誌への否定だって軽妙で、自分以外の誰にも怒りの矛先を向けまいとしていた。そんなところで「一切引かないし 一切負けない」を体現しなくたっていいのに、きみはいつもそうだ。でも、その姿は、やっぱり「俺がNEWSの盾になる」と言った手越祐也で、「(怒らないから)新人マネージャーは手越につける」と言われていたひとだった。ときに生きづらそうだなと思うくらい優しすぎる、NEWSというグループのメンバーだった人だ。
 
彼はそうして、これまでのNEWSと、これからのNEWSを守っていた。
 
 
 
 
 
 
その後のOPENRECの配信でも、彼はリニアモーターカーのように流れるコメントから、NEWSに関するものばかりを拾い上げて読んだ。
「増田さん痩せたよね、俺のせいじゃないといいけど、まあ俺のせいだろうな」
「昔B’z 増田さんとカラオケで歌ったなあ」
「俺、カラオケで NEW STORY歌って泣いちゃった」
「率直に、(メンバーに)会いたいです」
 
 
この人、きっと今3人に会えたら泣くんだろうな、と思った。
 
 
自分がもう「NEWS 手越祐也」ではないということを、誰より彼がわかっていないように見えた。もう十分だ、私の大好きだった4人の笑顔はもう守られた、十分だよ、って言いたかった。それでも彼は話し続けた。目を赤くしながらグループのことを話す姿を見て、なんて健気で寂しそうな生き物なんだろう、誰か、誰か彼を抱きしめてあげてくれ、と思いながら死ぬほど泣いた。
 
そんなに喋って大丈夫かなあと思うような瞬間もあった。彼は嘘がつけない。嫌いなものを好きと言うことができないのと同じように、好きなものを「好き」と言わないことができないのだ。でも、だからこそ、コンサートでファンに向ける彼の笑顔は眩しかった。そこに打算なんて一グラムもなく、心の底から嬉しく思ってくれていることが伝わったから。
 
 
 
そういう危なっかしさを、事実彼はたくさん持っている。
真っ直ぐに正しいと信じて、だけど間違えていることも、きっとある。
それでも私にとっては、彼のまっすぐさと優しさの方がずっと価値のあるものに思えるし、
むしろ、心配なところもあるからこそ、目を離すことができない。
誰より彼を軌道修正してくれたメンバーは、今その隣にはいないのだから、尚更。
 
 
 
彼が思い描くとおり、きっと今まで以上にファンとの距離は近くなる。私にはジャニーズ以外にも推しがいて、その人はファンとの会合を「親戚の集まり」と称してバスツアーに行ったり、ディナーショーを開いたりしているが、手越くんもきっとそういうイベントを開催していくんだろう。そして、なんとなくそういう「手の届くところにある愛」というのを彼が好みそうなこともわかる。ファンの声はもっと彼に届きやすくなり、多分「それ大丈夫?」って、ファンが心配したり、意見したりできるくらいの距離感になるだろう。そうやって彼が成長していくさまも、世の中にまだまだ伝わっていない手越祐也の魅力が伝わっていくさまも、わたしはまだ、彼の近くで見ていたいと強く思った。
 
 
 
 
 
ああ、わたしは、
 
4人のNEWSを、
 
手越祐也を、好きになりすぎてしまったんだな。
 
 
 
 
この痛みも、悲しみも、全部、好きになりすぎた報いなんだろう。
 
 
 
 
 
NEWSの4人を好きになって、全力で愛し続けて、
勝手にずっと一緒に歩いていくと決めたから、
わたしには、これからも"4人"を追いかける選択肢しかないのです。
 
 
 
 
 
 
 
手越くんは、もう、「NEWS 手越祐也」ではない。
 
でも、NEWS小山慶一郎加藤シゲアキ、増田貴久と手越祐也の絆を引き裂く権利は、誰にもない。だからどうか、これからも4人が、フィールドは違えど、共に生きる「戦友」であり続けられることを願う。こちら側には見せてくれなくてもいい。でもどうか、その繋がりが途切れませんように。一度4人で集まって、みんなが言いたいことを言い合って、心から前を向ける瞬間が来ますように。手越くんがいつかのコンサートにこっそり訪れて、また小山さんに「歌、よかったね」って言ってくれますように。そして、手越くんが本当にしゃがみこんでしまったときには、どうか3人の友人が寄り添ってくれますように。
 
 
4人が大好きなわたしから、4人のNEWSヘの、最後のお願い。
 
 
 
 
 
 
 
 
OPENRECでの配信の終わりがけ、彼はこう語った。
 
「今の芸能界って弱いものいじめ多すぎない?そういうの変えたいんだよね俺。誰かが矢面に立って矢が刺さったとしてもそれを言わないと変わらないじゃん。俺みたいなキャラクターじゃないとそれってできないと思うんだよね」
 
 
 
これから、彼の元には、今まで以上に激しく矢が降り注ぐ。
その矢から彼を守ってくれる人たちは、すぐ隣にはもう、いない。
だったらせめて、矢を受け止めながら笑って立つ君の瞳に映る、花の一輪でありたい。
これからの君を幸せにする、万の笑顔のうちのひとつでありたい。
 
 
 
私はこれから、NEWSのファンであり、手越祐也さんのファンになる。
 
 
 
 
 
 
 
 
冒頭の『世界で一番バカな旅人』を紹介した登場人物は言う。
 
損とか苦労とか、考えるだけ無駄だよ。
旅人は、そんなこと考えていないんだから。
誰かにとってはバカでも、僕にとってはバカじゃないだけ。
誰かにとっては騙しがいのある人でも、僕は騙さないだけ。
 
僕は、本当に喜ばせてあげたいと思うだけ。

 

 

私はやっぱり、4人の旅人全員の笑顔が見たい。

 

 

だから、これからもずっと、
枯れない四つ葉のクローバーを抱きしめて生きていく。