EVERGREEN

好きな人が物書きなもので、つい。

終わらない物語ーNEWS『STORY』30000字ライナーノーツ

お題「NEWSアルバム『STORY』レビュー」

 
 
 
 
 
愛がすごい。
 
 
 
 
『STORY』を聞き終えた時、なにかとてつもなく大きなプレゼントをもらってしまって抱えきれないような、気恥ずかしいような、そんな気持ちになって思わず天井を仰いだ。
 
 
NEWSのアルバム・プロジェクト最終章『STORY』。
これまで夢の国(『NEVERLAND』)、宇宙旅行(『EPCOTIA』)、仮想空間(『WORLDISTA』)といったフィクショナルな世界観を楽しんできた私たちにつきつけられたNEWSの「圧倒的リアル」。
 
『STORY』というタイトルの意味する「物語」とは、デビューから今日までのNEWSの17年の「物語」であり、共に歩んできたファン一人一人の「物語」であり、NEWSとファンの関係性の「物語」でもある。
 
 
 
NEWSは、度重なるメンバーの脱退や活動休止と言ったアップダウンのイメージが強く残るグループだ。しかし、一度起きてしまったことは変えられず、世間的なイメージもまた変えることが難しい。ならばと彼等はその”歴史”を上手く利用し、「何度でもまた立ち上がれる」というメッセージの楽曲を多く歌ってきた。そんな”NEWSの持つ物語性”をそのまま作品にしたのがこの『STORY』だ。この『STORY』という旅で私たちはNEVERLAND〜WORLDSITAまでの直近3作品、そしてデビューから今日までの歴史をメンバーの独白とともに辿り、これからのNEWSの物語ーー『NEW STORY』に思いを馳せる。
 
 
 
 
そして、その物語に絶対不可欠な存在として語られるのが、”ファン"の存在である。
「エンターテイメントに対する責任」「ファンのみんながいてくれたから」様々な言葉と音楽で表現されるNEWSからのメッセージは、おきまりの「みんないつも応援ありがとう!」なんてありふれたセリフではない。「ファンが自分たちに励まされて生きていることこそがやりがいでアイドルを続けられる」のだという、生きた言葉だった。
 
 
私はどこかで、「自分はアイドルから勝手に元気をもらっている」と思っていた。些細な表情の変化に心躍らせ、一度として同じものはないパフォーマンスに興奮し、些細な発言に胸を打たれる。それは、アイドルの預かり知らぬところで自分が勝手に楽しんでいる行為で、むしろ本人に知られたら恥ずかしいようなことだと思っていた。
 
 
 
しかし、NEWSは知っていた。
 
 
「ファン」という人たちが、ラジオで何気なく放たれた一言に心救われていることを。
たった一日客席から顔を見れることが楽しみで毎日を生きられることを。
私たちにとって彼らのエンターテイメントが必要火急のものであることを。
それを理解した上で彼らはあの手この手を尽くし、アルバム一作を通してファンに全力で愛(かえ)す*1のだ。
 
 
 
 
『STORY』というアルバムは、紛れもないNEWSのセルフドキュメンタリーであり、そしてファンへのラブレターである。
 
 
 
 
今までのNEWSのアルバム・プロジェクトでも、フィクションが好きな人に聞いて欲しい、二次元が好きな人に出会ってほしい、音楽好きに手にとってほしい、という感想を抱いてきた。
 
 
 
 
今作は、応援したい誰かを持つすべての”ファン”に聞いてほしい一作である。
 
 
 
 
 
 
 
 
以下、一曲ずつ楽曲について書いていく。
(長いので目次をつけました。)
 
 
 
 
 
 

1.STORY

記憶の糸を辿るようなストリングスの音色。次第に音が増え、物語の幕開けを高らかに宣言するようなファンファーレが鳴る。暗闇の中で聞こえる語り、そこからはじまるような壮大な音のスペクタクル。まるでディズニーシーの名物ショー『ファンタズミック!』のようだと思う。
 
あの未知の物語に招待される高揚感。
待ちわびたエンターテイメントが幕を開けるときの興奮。
NEWSファンが毎年ライブで体感してきたあの感動を、この2分の壮大なイントロは音楽だけで感じさせてくれる。
 
特に、イントロの後半パートで重なる語りがずるい。

You have finally made it to the 4th area of “Story”
“Story” is a bit different area compared to the other areas, this time you are traveling inside the member’s heart.
Here, we would like to take a look back about the time you and the members have spent together.

— STORY PROJECT OFFICIAL (@STORY_project_4) 2020年2月11日

Are you ready to hear the voice of their heart?
Alright, Let the Journey Begin.

— STORY PROJECT OFFICIAL (@STORY_project_4) 2020年2月11日

 

この言葉に重なる、花畑を舞う蝶のような柔らかいストリングスの調べ。声に誘われるように、私の頭の中でNEVERLANDからWORLDISTAまでの壮大な回想がはじまる。鍵職人のNEWS。初めてのコンサートで見た風景。宇宙旅行。ドーム公演。ファンサの記憶。NEWSが見せてくれたフィクションと、自分の目で見たリアルな記憶が混ざって、どうしようもなく感慨深い気持ちになる。どうかライブでもそんな演出があってくれと願わずにはいられない。

これは預言なんですけどあの長いイントロの間に私たちが旅してきた記憶が映像で流れるんですよ……鍵職人、パイロット、そしてアイギアをつけたNEWSが、コンサートの記憶が、歴史のページを辿るように流れてきて、最後めくった1ページから“STORY”がはじまるんですよ………… #NEWS #STORY

— べーぐる (@bagle00) 2020年2月18日

 

イントロのオーケストラとは打って変わり、まるで全く違う曲かのように始まるAメロ。
 
「胸に抱えたSTORY
誰にも言えずに 行き場所なくしても」
 
ここで最初からこんな言葉があろうとは思いもしなかった。
 
『STORY』発売前、「STORY PROJECT」と題してNEWSは去年の夏からロゴ、「将来の夢」を語る声、そして「あなたのストーリー」をファンから公募していた。最初は楽しそうだと思ったが、そのうちどうしても採用/不採用が出てしまうことへの危惧などから気持ちが乗らなくなり、結局私は応募しなかった。もちろん、人に言える話じゃないからとか、さまざまな理由で応募しなかった人は多くいるだろう。
 
それをNEWSは知っていた。その上で、「誰にも言えなかった人」へのセーフティーネットを表題曲の一番最初に用意した。絶対に「自分たちのファン全員」に届けるという執念すら感じる心配り。『STORY』を楽しく聞けるだろうか、そんな心配をしていた人の袖を掴んでNEWSは言う。「ちょっと待って、最後まで聞いていって、これはあなたのSTORYでもあるのだから」と。
 
 
 
 
さらに『STORY』で意外だったのはそのサビである。
 
「超えろNEVERLAND いまEPCOTIA This is the WORLDISTA」
 
ストレートにこれまでのアルバムタイトルをなぞっていくだけの歌詞と、そこに重なる「N!」「E!」「W!」「S!」のコーラス。『STORY』が過去三作の伏線回収も兼ねた「シリーズ最終回」であることを強く感じさせる。
 
 
しかも、それはサビだけではない。
 
「脅威は待ってる この世界は誰のモノ」、と『NEVERLAND』の「7つの脅威がそこで待ってる」という歌詞を彷彿とさせる部分には、『NEVERLAND』のサビで使われていた「SOUND, with the LOVE, MAGIC, RAY, FIRE, WATER, DANCE」の声が敷かれている。
 
そして、『EPCOTIA』の「1961 そしてまた一歩」のように年号が歌われている次の「声上げた2003 旅ははじまり」では『EPCOTIA』の「Venus, Uranus, Saturn, Jupitar, From the Earth…」が、『WORLDISTA』のようなカタカナが特徴的な「未来ヲ描ク STORY」からは『WORLDISTA』の「イマジナ ギミヤラ THIS IS THE WORLDISTA」が鳴っているのだ。
 
先述した「声上げた2003」の2003はNEWSのデビュー年であるが、つまりこの曲はデビューから今日までのNEWSの歴史、そして2017-2019年のアルバム・プロジェクト過去3部作の歴史の上にこの『STORY』が生まれたことをあの手この手で表現しているのである。
 
 
そう考えてみると、この壮大なイントロはどこか夢の国・『NEVERLAND』を彷彿とさせるし、それとは打って変わって重厚なビートが響く歌パートはデジタルな仮想空間がテーマだった『WORLDISTA』のようだ。もしかしたらライブでは、この曲のイントロとAメロの間に過去の表題曲が挟まるなんて演出もあるかもしれない。
 
この5分5秒で、わたしたちは第四のエリアに招かれただけでなく、第一〜第四のエリアを一気に旅したような感慨を味わうこともできる。
このアルバムが単体として存在するだけでなく、アルバム・プロジェクト四部作のフィナーレでもあることを提示してくれる秀逸な表題曲である。
 
 
 
 
 
 

2.SEVEN

『STORY』のアウトロから間髪いれずにはじまる疾走感のあるイントロ。前作『WORLDISTA』での二曲目『DEAD END』を彷彿とさせる、コンサートのオープニングを加速させるようなC&R曲だ。
 
何より面白いのは歌詞カードの右下に添えられた『()内は”みんなでつくる物語” 』の文字。今までもC&Rが楽しい曲は多くあったけれど、ここまで明確に指示があったのは初めてだろう。そのカッコ付きの歌詞には音源の時点でしっかりコーラスの声が入っており、当たり前に「ファンのパート」として音源が作られている。"みんなでつくる物語"だから、ライブで披露して声が合わさってこそ真に完成する一曲、というわけだ。
 
しかもサビだけ、一箇所だけというわけではなく増田さんのラップ部分にまでがっつりファンパートが組み込まれている。(『感謝カンゲキ雨嵐』はじめ英語の偏差値慶應レベルの難易度高いラップで鍛えられたジャニオタでよかった…。)
 
 
さて、『SEVEN』というタイトルだけあって、歌詞には”7”が多く登場する。
 
「7音階(ななつのおと)に乗り」
「探した7つの希望」
「7つの惑星(ほし)の下」
「月火水木金土日」
「rainbow 空は7色」
 
そしてサビで繰り返される「4+7」。
 
この「4+7」、私は「SEVEN」は「7つの要素」そのものか、「ファン」を指していると考えている。
 
これまでのアルバム・プロジェクトには、「7」のつく要素が多く登場してきた。
NEVERLANDでは”炎”、”水”、”光”、”踊り”、”音”、”魔法”、”愛”からなる"7 elements”、EPCOTIAでは地球を除く太陽系の”7”つの惑星、WORLDISTAでは”7つの希望”として。
 
また、アルバム・プロジェクト以外にもNEWSには”7”を想起させる曲がいくつかある。
 
たとえば、
 
「7音階(ななつのおと)に乗り」→?
「探した7つの希望」→『WORLDISTA』
「7つの惑星(ほし)の下」→『EPCOTIA』
「月火水木金土日」→『weeeek』
「rainbow 空は7色」→『SEVEN COLORS』
 
というこじつけもできるかもしれない。
 
単純に考えれば、そういった7つの要素と「NEWS」(=4)が組み合わさった無敵のエンターテイメント、という意味にとれるような気がする。
 
 
一方で、「4+」と言えば思い浮かぶのはライブ定番曲『4+FAN』。
ここでいう”4”はもちろんNEWSである。
とすると、「4+FAN=11」、つまり「7=FAN」、という三段論法も成立するかもしれない。
このアルバム・プロジェクトの伏線回収も兼ねているのが『STORY』であるから、ライブでファンが7つの要素に振り分けられるような展開になる、ということも考えられる。
 
いずれにしろ、謎解きはライブのあとで、ということになりそうだ。
 
 
 
ところで、ラップ部分の「4+7 俺ら無敵のELEVEN」。「11」というのはサッカーの一チームの人数でもあるわけだが、この曲に続くのは日テレ系クラブW杯テーマソング『SUPERSTAR』である。ここで少しでもサッカーを意識させた状態で、サッカーソングに繋がっていく…というのが故意だとしたら、なんとも粋な構成である。
 
 
 
 
 
 

3.SUPERSTAR

『SUPERSTAR』を聞いて思い浮かんだのは、水面すれすれから徐々に高度をあげて飛んでいく、一羽の鳥の力強い姿。
 
そんな想像を抱かせるのが、『STORY』『SEVEN』に続いて印象的に使われている羽ばたきで風を切るようなストリングスと、「ひとり うみわたり とおい きみをおもう」と平仮名で綴られた歌い出しだ。増田さんのやわらかい声によく似合う平仮名は古典の和歌のようで、仮名の音の中に広がる無数の意味を想像させる。そして、言葉を漢字に変換して理解しようとする過程で、より強くその意味について考えてしまい、知らず知らず視覚的なイメージを描かされる。この表記にはそんな計算された不自然さがある。
 
 
NEWSが歌うサッカーソングは2015年の『ANTHEM』あたりから徐々に変化し、『KINGDOM』『SPIRIT』そして今回の『SUPERSTAR』とローテンポなナンバーが続いている。しかしこの、大会の祝祭性やスポーツのエネルギッシュさにフォーカスするのではなく、選手の内面や静かに燃える闘志を描き出すような楽曲こそが、30代アイドル・NEWSの応援歌だ。挫折、苦悩、焦燥、自分たちがさまざまな困難を超えてきたからこそ、実体験に基づく想いを歌に乗せ、誰かを励ますことができる。NEWSが歌うからこそ、「いくつもの夢抱き あの敗北からまた一歩挑もう」という歌詞が強い説得力を持つ。
 
2003年、バレーボールの応援からスタートしたNEWSの歴史。言葉を変え、メロディーを変え、常に誰かを応援してきた、今のNEWSの応援ソングがここにある。
 
 
 
 
 
 

4.We Never Gave Up - Interlude-

NEWSのアルバムではお馴染みになったInterlude。
これまでのアルバムでは、声優さんがその語りを担当し、アルバム全体のシナリオをつくるような役目を果たしていた。
 
しかし今回始まったのは、”挫折”についての加藤さんの語り。
ここに来てはじめて、私は「メンバーの心の旅」というコンセプトをはっきりと理解したのである。
 
 
「ここで具体的に言うのは…」と渋りつつ、「メンバーが減った時」という具体的な問いにも真摯に答えてくれる加藤さん。私が特に好きだったのは「挫折し続けてそれでもまだ自分に可能性を探してた」という言葉だった。
 
 
以前、「自己肯定感の低い人」には二種類あるんじゃないか、という話を友人としたことがある。比較的自分への期待値が低く、肯定感は低いし卑屈っぽいけれど「自分なんてこんなもんでしょ」と思える人と、自分への期待値が高すぎて「なんでこんなにできないんだろう」「本当はもっとできるはず」と思ってしまう人。圧倒的後者の私から見ると、きっと加藤さんもそうなんじゃないかと感じる。
 
聞こえがいいように言えば、飽くなき向上心故の自信のなさ。極端に言えば「頭いいですね」って言われて「いや、アインシュタインに比べたら全然でしょ」って答えるようなおかしな謙遜。これはきっと過去に自分の傲慢さを指摘されたり、自覚したりした経験がある人によく見られる傾向で、私と加藤シゲアキさんはたぶんそういうところが結構似ている。
 
でも、そういう向上心がある自分や謙遜できる自分は嫌いじゃないと思っている上に、そもそも期待する、ということは自分をめちゃくちゃ信じていることになるので、外から見たらナルシストのようにも見える。だから、加藤シゲアキという人には「ネガティブ」「謙虚」「自信」「救いようのないナルシスト」という相反して見える言葉がすべて同居しうる
 
「挫折し続けてそれでもまだ自分に可能性を探してた」「…から、諦めなかった」と語る加藤さんに、私はどこかで理想の自分を重ねているのだと思う。自分に可能性を探してた、そこまでは確かに言えるけれど、一瞬の沈黙の後に「だから諦めなかった」と言える自信が、私にはまだない。
 
 
 
 
 
 

5.何度でも

小窓から陽光が差し込むレトロな喫茶店で、穏やかな昼下がりに物思いにふけるようなメロウな一曲。外は春風駘蕩として、テーブルには差した光が綺麗な帯をつくっていて、お気に入りのコーヒーが美味しくて、だからこそいろんなことを心穏やかに思い出せるような、そんな午後。
 
「空白」を強く感じさせる休符の多いイントロ。まるで回想の中で断片的な記憶を繋ぎ合わせるかのように、一曲を通してこのメロディーがずっと響いていく。音楽好きが好みそうな進行だなあと思う。
 
「僕たちは諦めなかった」と過去を振り返ったInterludeの流れを引き継いで、楽曲は加藤さんの「踊るように時は流れ」というパートから始まる。Interludeでメンバーの変遷についても明確に語られたからこそ、「残る仲間たちとともに」という歌詞がダイレクトにNEWSを想起させる。その後に続く1〜9の数字が入った歌詞は結成当初NEWSのメンバーが9人だったことから来ているのだろう。それを「今も思い出すけれど」。ここもInterludeの加藤さんの語りと強くリンクする部分。このアルバムのテーマが「メンバーの心の旅」と置かれているのも納得する。
 
 
この曲は現代の音楽シーンをときめく向井太一さんからの楽曲提供である。
 
先日「NEWSのコンサート映像を何度も見て曲に落とし込んだ」とつぶやいていた向井さん。
ファン、ではない向井さんの目にもNEWSはこう映ったのだと思うと、改めてこの『STORY』というアルバムは良い意味でも悪い意味でもNEWSというアイドルを象徴したアルバムだなと感じる。
 
それから、最後のサビで重なるコーラスの声。これは私たちファンの存在ではないだろうか。NEWS4人だけではなく、「どんな先でもみんな(=私たち)がいる」から「何度でもまた歩き出せる」。このアレンジは、なんだか向井さんからNEWSヘのエールのようで、NEWSと私たちファンの宣誓のようでもあるようだ。
 
 
そして、この曲を聴いて改めて思ったのは、本当にNEWSは歌が上手いし上手く"なった”ということ。ただハイトーンが出る、音を外さないというのとは違う、楽曲に合わせた自在な歌い方ができるようになったと感じる。この曲に関して言えば、決して音数が多くない淡々とした曲のテイストに合わせるように、『SUPERSTAR』で聞かせてくれたような力の込もった歌い方を一切せず、ウィスパーボイスや自然なファルセットを多用しているのが特徴だ。
 
それを象徴していてたまらないのが加藤さんの「いつしかバイバイ」と「ただいまと 言ぃえるぅ場所」。これは自担色眼鏡だけれど、この曲の中でも特に歌い方のアレンジが光っているポイントだと思う。
 
ハスキーで綺麗すぎない人間味のある加藤さんの声はNEWSの曲にいつもワイルドさやアーバンな雰囲気を添えてきたが、この曲の「お洒落さ」に関してはほぼ加藤さんのそれから醸されていると言っても過言ではないと思う。NEWSに加藤シゲアキという人がいなければ、きっとこの曲はここまで光らないだろうーーそう思わせるほどの存在感。もちろん他の3人にも同じような曲がたくさんあるわけで、見事に異なる4人の声質を存分に生かし、重厚なユニゾンを奏でたかと思えば、誰か一人を立てることで、癖のある楽曲でも難なく歌いこなすことができるのがNEWSである。NEWSの歌唱力は、もはや「アイドル」のイメージを大きく超えた、アーティストの域に達したと私はここに確信する。
 
 
 
 
 
 

6.What is  Love? -Interlude-

一曲を挟んですぐに、「愛」についての小山さんの語り。
楽曲の並びを見たときには一曲でInterludeという構成が挑戦的だと思ったりもしたが、この「曲が終わってすぐ語り」という構成が、このアルバムにラジオ、あるいは音楽ドキュメンタリーのようなテンポ感を生んでいる。
 
小山さんが語る「真実の愛」の定義はこうだ。
「自分からだけじゃなくて相手からも愛されてはじめて”愛し合う”ということが実現する」
「一生続く愛は……それを信じて生きてるけどね」
その言葉を受けて、次からは双方向の愛情、「愛し合うこと」を想起させるラブソングが続く。
 
 
 
 
 
 

7.STAY WITH ME 

fm yokohama・SORASHIGE BOOKでも何度か紹介されていた、eillさんの提供楽曲。
しっとりしたピアノから始まるスローなバラードのようで、二番からは音数が増えるドラマティックなアレンジになっているので聞き飽きない。間奏以降のストリングスの流麗な響きが、まるで映画の挿入歌みたいだなと思う。個人的には通勤電車の窓の外に流れる景色を見ながら聞くのがお気に入りだ。
 
 
さて、少年倶楽部プレミアムで解禁されたこの曲を見たときの正直な感想は、「またこんな両思いみたいな曲を作って…」だった。
 
そこには私からNEWSへの気持ちも、NEWSから私へ、と取れるフレーズも含まれていたからだ。
 
 
 
つまりこの曲は二通りの聞き方ができる。
NEWSから自分へ、と捉えるか、自分からNEWSへ、と捉えるか。
 
前者は少プレで披露されたとき「他の誰かじゃなく君だけを笑顔にする準備は万端」でカメラ(の向こうのわたしたち)を指差してくれる増田さんを見れば言わずもがな。特にNEWSは、ファンを実体のない空気などではなく、「一人一人の人間」として強く認識してくれるアイドルでもある。その姿勢は今回のアルバムのファン参加型企画や『君の言葉に笑みを』『クローバー』のような曲、また本気の人生相談に真摯に答える加藤さんのラジオなんかにも現れていると思うが、NEWSが言う「君=You」は複数形でありながら単数形でもあり、常に「Everyone」で一人一人に向いている。そういう意味で、この詞の「君だけを」は「NEWSファンだけを」とも捉えられるし、さらに文字通り「あなただけを」とも取れるのが面白いところである。
 
翻ってファン目線ではどうか。
 
ジャニーズのファンは自分が一番好きなタレントのことを「担当」と呼ぶ。ファン用語にしてはなかなかに重々しいこの名前は、その人の個人のお仕事を欠かさずチェックしたり、うちわを持ったりすることで「他の誰でもないあなた」に風を送りたいというファンの主体的な意識から生まれていると私は思うが、そう考えると、「他の誰かじゃなく君だけを笑顔にする準備は万端」という歌詞は私たちファンにも言える台詞なのではないだろうか。ときに使命感すら感じながら出演番組を視聴し、ライブで個人うちわを買う私たちの行動にはきっと「他の誰かじゃない”君"を幸せにしたい」という願望があって、その理由を聞けばきっと「こんなに好きな人に巡り会えたからね」となるのだ。
 
遡れば歌い出しの「初めて君を見たあの時を今でも覚えてる」「一目惚れの恋煩(こい)にかかった模様だ」という部分はまさにファン目線で共感できる歌詞だろう。初めて君を見たあの時、つまりは好きになってしまったきっかけというものは、どんなファンにも必ず存在する。
 
 
 
 
アイドルへの感情は、NEWSを好きだと思うこの感情は、カテゴライズするなら恋に一番近いのかもしれない。でも私はこれを恋愛感情だとは思っていない。
 
私は「恋」にあって「愛」に少ないものがあるならそれは”その人にとってオンリーワンになりたいという欲望”だと思っている。そしてNEWSに対してはその欲がなくて、もっともっと多くの人に愛されて欲しいと思っているから、私にとってこれは恋ではない。
 
でも、NEWSにとって私はオンリーワンではないけれど、『何度でも』で「君がいたから」と歌われる「君」のひとりではあるのだ。そして私にとってNEWSはオンリーワンで、お互い大切に思っていることに変わりはなくて、そこには恋ではないけど、限りなく恋に近い感情が存在しているのではないかと思う。今は「これが恋なのか予測変換や計算で測れない」けれど、「恋煩」と書かれれば確かにそのようで、10年後には的確な名前が生まれているかもしれない。そんな愛と名のつくなにかを、私とNEWSはお互いに抱いている。
 
 
 
 
それから、この曲を聞いてブレスの位置が不自然だな、と感じる人もいるかもしれない(一緒にアルバムを聞いた友人の感想はそうだった)。特に顕著なのがAメロとBメロで、たとえば一番の手越くんパートは聞いたまま書き出すと「割と僕はなんで、もこなせる器用、なはずなんだけどさ」となる。どうだろう、句読点を打つと、まるで泣いている人がしゃくりあげながらたどたどしく言葉を繋いでいるみたいだ。個人的にはこの不自然な文節は想いを伝えようとする主体の”必死さ”の演出になっているように思う。そばにいて、と伝えるために、ありったけの語彙をかき集めて、一語一語言葉を紡いで歌う-----なんだかこの曲を歌うNEWSの姿も、そんな風に見えてくる。
 
 
 
 
 
 

8.Perfect Lover

前作『WORLDISTA』での『Digital Love』を彷彿とさせる、Jazzin'park 栗原さんによるポップでエレクトロなナンバー。イントロの跳ねるようなメロディーがBメロやサビでもずっと鳴っている、音を追うのが楽しい一曲だ。
 
大サビ前、Cメロの後の盛り上がりの後に差し込まれる一瞬の空白は、『AVALON』の大サビ前と同じ手法。どんな未来を選んだとしても出会ってしまう「君」の後ろ姿に音とともに近づいていき、「君」を振り向かせる直前の時間が止まったような期待感を、この空白が演出してくれる。
 
私がこの曲で特に好きなのは、サビの「もうほっとけない」を任されている増田さんの歌声である。私はよく増田さんの歌声を、まるい、やわらかい、かるい、と形容する。そのやわらかさゆえに空気抵抗が少なく、たんぽぽの綿毛のようにどこまでも流れていきそうな声をしている。触っても弾けないシャボン玉みたいな声。だから増田さんの声は、こういう高い音から低い音へと流れていく、波のようなメロディーと相性がいい。EPCOTIA収録『HAPPY ENDING』での「でも〜確かに 君の中に夢がある」というパートもそうだ。気づいたらそばにいて、気づいたときには離れているような、掴み所のない不思議な歌声。増田さんの声はさながら春の風のようだと思う。
 
 
 
 
楽曲終了後には、WORLDISTAでの『クイズーINTERー』を思い出させるセブン・クエスチョン。ここに突然過去作のような演出が入ってくることも、セブンと言っているにも関わらず全部で9問あることも、どちらも謎だらけ。
 
座右の銘は?という質問に対する小山さんの「人生一回。」という答えに聞き覚えがあって探していたら、2015年の日記に書き留めていた小山さんの言葉を見つけた。
 
「前に進むことしか考えてない。だって人生は一度きり、今日は今日しかないんだから。悩んだり凹んだりすることもあるけど、今日という一日を楽しまなかったら人生を楽しむことも充実した時間を自分のものにすることもできない。どんな瞬間でも、自分を信じて、楽しんで目の前の道を突き進むしかない。」
 
ソースがわからないので詳しくは語れないけれど、数年前も今も、変わらず同じ軸を持って生きている小山さんは純粋にとてもかっこいいなと思う。
 
(なお、このクエスチョンを聞き終えた後に、私が「品のある 女性」でGoogle検索したことは言うまでもない。)
 
 
 
 
 
 

9.Love Story

アプリゲーム『NEWSに恋して』のタイアップとして発売されたシングルにして、間奏部分にはライブで収録したファンの声が使われているという、"共創"がテーマにある今作『STORY』らしい一曲。
 
このエピソードの恐ろしいところは、曲ありきで歌ったシンガロングではなく、全く知らないメロディーを即興で歌わされた、というところにある。2018年から2019年にかけて行われたカウントダウンコンサート、EPCOTIA ENCORE。途中、力を合わせてブラックホールから抜け出そう!という演出で、突如モニターに表示された五線譜とリズム。ドンドンパッ、のリズムを刻むブロックとメロディーを歌うブロックに分けられ、数回流れたメロディーに合わせて、「大好きな人を思い浮かべて歌ってね」と言われたが、なんの曲のメロディーだろうと必死に考えても心当たりがない。とりあえず無茶振りに答えて、一生懸命NEWSのことを思い浮かべながら必死に歌った。
 
それが最終公演ではモニターに「REC」と表示されていたらしい。その謎は6月に解けた。タイアップが発表されてから数ヶ月、『トップガン』との両A面シングルとして発売されたからだ。コーラスなんてものではなく、がっつり曲中で使われたファンの歌声には、NEWSのセリフが重なっていた。
 
Message from NEWS
Don’t worry, be happy
This is our love story
I mean…
I LOVE YOU
 
 
これが僕たちのラブストーリー。
 
 
どこまでも内向きに、ファンとのコミュニケーションを重視するNEWSは、とうとうシングルの発売すらサプライズプレゼントのようなパフォーマンスにしてみせた。昨年のライブツアー『WORLDISTA』では、ライブのトリを飾るナンバーとして、この曲を一緒に歌い踊ったファンとNEWS。「君にそうずっと恋をする」の振り付けでは、当たり前にすべての観客がメインステージにいるNEWSを指さしていた。
 
「大好きな人」と言われて、ファンがNEWSを、NEWSがファンを思う奇跡。
 
『Love Story』は、外から見たら滑稽に見えるかもしれないこの幸せな両想いを祝福する、NEWSとファンのためのアンセムなのである。
 
 
 
 
 
 

10.Commitment -Interlude-

「エンターテイメントに対する責任」という、増田さんの言葉が重い。
4人の中で誰よりもジャニーズであること、アイドルであることに誇りを持っているように見える増田さんが語る言葉には強い矜持が見え隠れする。
 
「こだわりというか、責任?」。わたしもクリエイティブっぽい仕事をしていた経験があるから、なんだかその言葉がわかるような気がしてしまう。本来万人に必要ではないもの、それを求めて、さらに自分を選んでくれたからには、120%のものを提供しなくてはいけない責任ががあると思う。そんな譲れない思いが、言い換えれば「愛」になるのかもしれない。
 
後半は次曲『エス』への導入になっている。
「アイドルがただ愛を奪い取る」ーーその言葉に、NEWSのエンターテイメント性を象徴する二曲が続く。
 
 
 
 
 
 

11.エス

増田さんのラップから始まるゴリゴリの攻めたナンバー。この曲があることで、どうしてもバラードが多くなってしまうこのアルバムのエンターテイメント性が一段上がり、聞き飽きないラインナップになっている。ライブでも振りつきで魅せられる、必要不可欠な一曲だ。
 
 
しかし私がここで疑問に思ったのは、なんで”エス"なのだろう?ということだった。
 
雑誌の情報から、「エスは”サディスティック”のエス」と聞いていた。しかしそれにしては『バンビーナ』や『 I’m coming』なんかと比べて淫猥なフレーズが少ない。それに、『STORY』の頭文字"S"とかけるにしても、タイトルは英字の”S"でよかったはずだ。
 
そこで思い出したのが、エス(イド)としての”エス”。
フロイト精神分析によって説明した心のはたらきである。

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フロイトの理論による心の構造


要約すると、私たちが自覚している意識の奥には、普段は意識にのぼっていないけれど頑張れば思い出せる【前意識】、さらにその奥に【無意識】の領域があり、その無意識領域に【エス(イド)】が存在している。【エス】は超快楽主義な心理、と捉えていい。それを【自我(エゴ)】と【超自我(スーパーエゴ)】がコントロールして、我々は日々節度あるふるまいができている…という論理だ。
 
この論理をもとに考えると、「The answer is “エス”」……答えは”エス”。つまり無意識下にある性衝動や攻撃衝動こそが正解だというのだ。自分の中の【スーパーエゴ】、つまりトリガーを取っ払い、快楽を求める気持ちを前面に出してエンターテイメントを享受してくれ、と煽っているように聞こえる。心をむき出しにしてくれ、そんなメッセージか。
 
この意味で考えると、加藤さんの「俺が見たいのは もっと奥さ 君のこと かき混ぜたいんだ」も、意識の下にある「君」の本能が知りたい、という意味に取れる。とはいえ言われるがままに【エス】と【エゴ】と【スーパーエゴ】をかき混ぜられてしまったら、自分の正しいと思っていた価値観も倫理観も全部崩壊するのではないだろうか。そんな危険な欲求を言葉にするのが、小説で人間の危うい衝動を描くことも多い加藤さんだというのがまたずるい。
 
 
さて、この発想を閃いて倫理の教科書を読み返していた頃に、ライナーノーツで加藤さんがフロイトの名前を出したというのを聞いて(書き上げるまで読まないようにしていました)自信満々に書いてみたはいいものの、完全にこの意味が正しい、というわけではないと思う。むしろこの曲は、どの意味でもそれっぽく聞こえるように作られている。エス(イド)と、サディスティックの「S」と、『STORY』の「S」を全部束ねた、多義語であり音としての『エスなのだと思う。
 
余談だが、加藤さんがドラマで青山くんを演じた『嫌われる勇気』の著者・アドラーフロイトの弟子である。いま、加藤さんがフロイトの理論に言及したことも、なんだか不思議な巡り合わせのように思えて面白い。
 
 
 
 
 
 

12.トップガン

ドラムのカウントから入る、聴き慣れたイントロ。『エス』の衝撃の後に来る『トップガン』には正直、実家に帰ってきたような安心感を覚える。しかしこの曲の安心感を醸しているのは聴き慣れたシングルだから、という理由だけではない。この曲を聞いたときに思う「ジャニーズっぽい」という感想こそが、おそらくこの懐かしさの理由である。
 
 
ジャニーズらしさとはなにか?
 
そのひとつは間違いなく「歌って踊る」ことにあるだろう。ミュージカルに端を発しているジャニーズにとって、ダンスは重要なアイデンティティだ。あるいはスケスケの衣装だったり変なグループ名だったり、教育テレビでやってそうな手洗いダンスなんてものを作ってしまうトンチキさ。それから、覚えやすいポピュラーミュージックであること。明るい曲調でありながら、テンポは速すぎず、一度聞いたら忘れないメロディーライン。たとえば他の楽曲で私がイメージするのは、嵐の『ワイルドアットハート』、なにわ男子『ダイヤモンドスマイル』、それから『チャンカパーナ』。
 
そのすべての要素が『トップガン』にはある。シングルでは久々のダンスナンバーであり、サビの「ダンダダダンダン」という謎のフレーズ、しかもそれが「合言葉は"ダンダダダンダン”!」と売り出し文句になっていたことはとてもジャニーズらしい。そして、何より覚えやすいメロディー。ブラスとギターが奏でるサウンドは、アイドルらしい疾走感とどんな聞き手にも嫌われない爽やかさを持っている。
 
そして、その「ジャニーズらしさ」こそが、Interludeでの増田さんの語りに繋がる部分である。NEWSは2012年の再始動時、シングルのA面にグループの物語と重なる応援歌である『フルスイング』ではなく、キャッチーな造語でよりパンチのある『チャンカパーナ』を選んだ。それはなによりも、NEWSの魅力である物語性を押し出す前に、グループのバックグラウンドに関係なく楽しめる歌と踊りのジャニーズ・エンタテイメントで勝負したいという想いがあったからだろう。そのジャニーズ・エンタテイメントで観客を魅せる、ということがおそらく増田さんの語る「責任」であり「愛」だ。だからこそ、『トップガン』の位置はアルバムのここでなくてはならない。
 
 
歌詞にも目を向けてみる。
 
「想いをひとつにして描くおとぎ話」
この 「おとぎ話」というワードは『エス』ともリンクする。
 
そしてなにより、「奪われたいと願った美しい人さ 君はトップガンというフレーズ。
Interludeで増田さんが語ったのは、「アイドルが愛をただ奪い取る、超リアルな熱…」という言葉だった。エス』も『トップガン』も同じく、「愛を奪い取る」歌だと考えれば、アイドルのファンである私たちは「奪われたいと願っ」てしまっている人間。つまり、私たちこそがこの曲における"トップガン"なのだ。
 
 
 
 
 
 

13.Prime Time of My Life -Interlude-

「最高の瞬間を共有したいひと…やっぱファンかなぁ」。
ここではじめてNEWSにとってのファンという存在について明言される。
 
自分の活動がもしかしたらファンの人生を変えるような影響を与えられているかもしれない、それが生きがいになるということ。ジャニーズを辞めたいと思ったときに踏み止まれたのもファンがいたからだということ。ファンがいるからこそ、ステージに立つ意味があるということ。
 
かつて出演した少年倶楽部プレミアムで、ジャニーズを辞めてロックに転向したいと思ったとき、自分を踏み止まらせるのは事務所でもメンバーでもなく”ファン"なのだ、と語っていた手越くん。「ジャニーズの、NEWSの手越祐也が好きだと言ってくれるファンの子がいるから辞めない」と言った彼の言葉にはここでも嘘がない。
 
そんな言葉に続くのは、STORYプロジェクトで募集したファンの声、エピソードをもとに制作された二曲である。
 
 
 
 
 
 

14.君の言葉に笑みを

ファンから募集した「わたしの夢」についての7秒のボイスメモを使用して制作された楽曲。イントロから語られるさまざまな夢に、NEWSの歌声が重なってゆく。
 
 
この曲の好きなところは、これだけ「夢」について語っているにもかかわらず、絶対に「夢は叶う」とは言わないところだ。なぜなら、後述する『NEW STORY』の冒頭にあるように、NEWSは何度も「夢に敗れ 夢にはぐれ」てきた人たちだから。努力は必ず報われるとか、夢は必ず叶うとか、夢や光に例えられるアイドルであればそんなメッセージを歌っても良さそうなものだが、NEWSは決してそれをしない。努力は報われるとは限らないが、決して無駄にはならない。成果が0か100かだとすれば、100に届かなくて結果夢が叶わなかったとしても、積み上げた80は必ず次の未来に繋がっていく。きっとそういう信念を持って、NEWSは「報われない日々はきっとない」「消えやしない夢の一歩を」と歌うのである。
 
 
 
今年、大学の卒業式が中止になった。訳あってモラトリアムを延長することにしていた私はこの春には卒業できないのだが、友人たちがせっかくだから袴で集まるというので、写真を撮りに行った。抜けるような青空。晴れやかな表情。こんな状況で不安も多いはずなのに、今この瞬間、この場所には希望しか存在しないように見えた。そんな門出の姿を見ながら、頭の中に流れてきたのがこの曲だった。
 
語り合った夢のどこかへ
忘れないで何があったとしたって
誓いあった僕らの絆
 
笑顔絶やさぬように
涙忘れぬように
行こう また次のStory
 
夢の形は人の数だけある。「○○になりたい」みたいな夢に限らず、叶えたい未来予想図は一人一人の中に必ず存在していて、それらはすべからく尊重されるべきものだ。この曲を聴いた当初は、すべての人の夢を肯定するなんて、NEWSは聖人君子か?なんて思っていたけれど、卒業という節目を迎え、まさにこれからかつての”未来"に飛び込んでいく友人たちを目の前にして私が抱いたのも、そんな感情だった。
 
私の祈りが届くなら、どうかみんなの未来が幸せなものでありますように。
ここに存在する無数の夢が、願いが、全部叶うといい。
君の未来に、君の言葉に笑みを。
 
「夢に描くまま 心でNEGAEVA…」とNEVERLAND、EPCOTIA、WORLDISTAの表題曲のフレーズが並ぶ歌詞に象徴されるように、この曲は間違いなくNEWSとファンの旅路を歌った曲なのだけれども、その日から私にとってこの曲は卒業ソングだ。
 
 
 
 
 
 

15.クローバー

『希望〜Yell〜』をもとに制作した、4人がリレー形式で歌う曲、という情報は得ていたが、まさかこんなアレンジだとは思わなかった。『クローバー』は四つの楽曲を『希望〜Yell〜』という楔で繋いだ、壮大な組曲だったのだ。
 
さらに言えば『希望〜Yell〜』だけではない。
 
増田さんのパートが始まった瞬間に、ふと香るように感じられたのは『Share』のピアノ。注意深く聞くと、それぞれのポエトリーラップの後ろにそれぞれ違う楽曲のエッセンスが含まれていることがわかる。増田さんパートは『Share』、加藤さんパートはサビ前の盛り上がりが印象的で『Smile Maker』。小山さんパートは『SNOW EXPRESS』で、原曲と同じ韻の踏み方をしている。手越くんパートで聞こえるピアノは『さくらガール』の進行に近い。そして、これらすべてが頭文字「S」で始まる楽曲である。つくづく細かい仕掛けが大好きな制作チームだ。
 
 
作曲も作詞も歌唱もNEWS。
曲を聞く前に歌詞カードを一目見ただけで、誰がどこを書いたかがわかってしまった。
ラップ調の歌詞に、おやつ代なんて言葉を出してくるのは増田さん。ラジオでお悩みメールといえば加藤さん。□♡△○の愛、とNEWSに言及してくるのは、NEWSが大好きな小山さん。言葉数少なく、歌に思いを載せてくるのが手越くん。
 
 
四葉のクローバーにはそれぞれ希望、誠実、愛情、幸運という意味があるが、この曲では、4人がそれぞれこの4つのメッセージを担当しているように思う。
この曲に当てはめるなら、「希望」の増田さん、「誠実」の加藤さん、「愛情」の小山さん、「幸運」の手越くん、という風になるだろう。
 
 
 
一番手の増田さんは「希望」だ。
 
「さぁここにおいで」
「優しい君が探してた場所が 僕らの愛したココだといいが」
このパートにおいて増田さんは、決して自分からは歩み寄らず、なにかを押し付けることをせず、  ただ居場所をつくってそこにいてくれる。それも、「君が探してた場所がここだといいが」ではない。「優しい君」「僕らの愛したココ」という修飾があることで、知らず知らずのうちに私たちは「優しい」と肯定され、此処は僕らも愛した場所だよ、とお墨付きをもらえる。自分の居場所、という希望。
 
「逃げる場所にしたっていい 辛くなるなら、聞かなくていい」
『クローバー』について、いじめのエピソードをもとに歌詞を書いた、と言っていた増田さん。辛いことから逃げることは決して悪いことではない、NEWSを、増田貴久を日常の逃げ場にしていい、それが辛くなるなら聞かなくていいーー。「逃げる」という選択を肯定し、またどんな状況にも複数の選択肢があるということを教えてくれる。聞かない、という選択だってしていい。道が閉ざされることはない、という希望。
 
「晴れたら北の汽車に乗ろう 東の空をもっと感じてよ
西、出会う、Dragonも 南に向かう君に僕からの Yell of hope」
北=NORTH=N=『NEVERLAND』のオープニング、汽車。
東=EAST=E=『EPCOTIA』での宇宙旅行=空。
西=WEST=W=『WORLDISTA』=ライブのシナリオの要となったドラゴン
そして、南=SOUTH=S=『STORY』に向かう今。
今日この瞬間まで、NEWSとともに旅をしてきた君=ファンへのエール、ということをライブ演出と絡めて歌ってくれる。『STORY』という先の未来を予感させてくれる希望。
 
 
 
二番手、加藤さんは「誠実」
 
「やりきれないことばっかりで どうして自分だけこんな目にって」
一貫して希望のエールを届けてくれるスタンスだった増田さんとは対照的に、ネガティブなワードから始まる加藤さんのパート。でもこれが加藤シゲアキという人の”誠実さ”なのだ。本人が決してポジティブではなく、辛く落ち込むような経験を数多くしてきたからこそ、人の痛みがわかる。そして、自分自身のやり場のない感情をきちんと言葉にして表現することで、「加藤さんも自分と同じような気持ちになることがあるんだ」と思わせてくれる。真摯に寄り添い、同じところまで一緒に沈んで、一緒に上がってくれるような、そんな誠実さ。
 
「わかるよ。でも僕になにかを伝えようとした時点であなたはきっと変わっている」
これは加藤さんからリスナーへのメッセージだろう。自身のラジオに届くおたより全てに目を通しているという加藤さん。つい先日の放送でも、著書の舞台化決定を祝うメールが多く来たたことを「800通くらい来たらしくて。全部読みましたよ」と嬉しそうに語った。そんな加藤さんのラジオには、悩みを打ち明けるようなメールも多く届く。しかし、決してそのすべてを取り上げられるわけではない。それでも加藤さんは読んでいる。取り上げられなくても、必ず読んでくれている。そんな私たちへの「わかるよ。」だ。加藤さんになにかを伝えようとした時点で、きっと一歩踏み出しているよと、すべてのリスナーを肯定してくれる。
 
 
「どんな夜だって超えられるから We’ll be together
見上げた先に光はある with you forever」
このフレーズから思い出されるのは、過去のNEWSの楽曲たちだ。加藤さんが執筆してドラマ化した『傘を持たない蟻たちは』の主題歌、『ヒカリノシズク』のワンフレーズにして、のちに文庫本のあとがきでも引用されていた「頼りない夜にひとつの光を点せたらいいのにな」。あるいはその2年後、『LPS』での「泣いたって笑ったって明日はやってくるから」。NEWSが一貫して届けてきたメッセージである。
 
それに続くWe’ll be together」はコーラスメインで、加藤さんは歌わない。歌うのは次の「with you forever」だ。つまりここはそのまま、前者が私たちのセリフ、後者が加藤さんのセリフ、と取れるのではないかと思う。加藤さんに「一緒にいようね」と言ってみたら、「ずっとそばにいるよ」と返ってきた。そんな粋なやりとり。
 
 
「希望を手放さないで  絶望に手を出さないで」
「絶望しないで」ではない。加藤さんは絶望とは「手が出てしまう」ものだと知っているんですね。そして希望も、握った手を開いたら飛んでいくような、簡単に手放してしまいうるものだと。もしかしたら、人はなにもかも諦めて絶望するほうが簡単なのかもしれない。諦めずに光明を探し続けるより、頑張ることをやめてしまう方がずっとずっと簡単なのだろう。でもそれをしないで、と諭すように加藤さんが言うのだから、そうするわけにはいかない。
 
自分のソロでは巧みに言葉を操り、比喩を重ねて解釈に委ねるような歌をつくる加藤さんが、これだけまっすぐな飾らない言葉で訴える。そこに「すべての人にこの気持ちを伝えたい」という強い意志を感じずにはいられない。
 
 
 
 
三番手、「愛情」の小山さん。
 
「近くにあるよ いるよ 気付いてよ」
「いつでも君の心にいたい」
NEWSの中で、誰よりも頻繁に会員制ブログを更新してくれる小山さん。それはつまり、日常や仕事の中で絶えず「これブログにあげよう、ファンの子に見せよう」と思って自撮りをしたり、文章を考えたりしている小山さんの中に常にファンの存在があるということだ。以前、パンツを買いにいったら紫、緑、黄、ピンクのカラーバリエーションがあって、思わず「NEWSだ!」と思ったという話をどこかで小山さんがしていた。メンバーカラーの四色が並んでいるなにかを見るだけでNEWSを想起する私たちと同じような発想が小山さんにはあって、さらにはそれを見て「ファンの子がいたら買うかな」などと考えてもくれるのかもしれない。そんな、本当にいつもNEWSと、私たちのことを考えている小山さんからの「近くにあるよ いるよ」そして「いつでも君の心にいたい」は、凄まじい説得力を持つ。
 
「みんなの優しさに触れて 感じる温もりがここにある
子供のころの自分に これが愛って伝えたいんだ」
子供のころの小山さんのエピソードを、私はほとんど知らない。かろうじて知っているエピソードは、幼少期の両親の離婚という、決して明るくない出来事。その小山さんが「子供のころの自分に これが愛って伝えたい」と歌う。小山さんにとっての愛、それはInterludeでも語られているような「双方向の愛情」だ。それを感じさせてくれた、ファンとのコミュニケーション。もし、小さい小山さんがジャニーズの道を選ばずに生きていたら、「これが愛」って伝えたくなるような瞬間には出会わなかったかもしれない—そう考えると、私たちが経験している「人生が変わるような感動」は、アイドルの側にも存在するのだと感慨深い気持ちになる。
 
 
 
そして、アンカーは「幸運」の手越くん。
 
「あの日 僕ら偶然出会い まぶしい 毎日がはじまり
ひとり僕じゃ全然できない事ばかりだったけど」
出会えた偶然を歌うところからはじまる手越くんパート。その後にはずっと出会えた「君」が幸せを運んでくれたことへの感謝が綴られる。NEWSに、あるいは手越くんが自分のファンに、出会えたという幸運。
 
印象的だったのはその後の「ひとり〜」のフレーズだ。今の堂々と立つ手越くんを見ていて、この歌詞が出てくるというのは意外だった。「あの日」がいつを指すのかはわからないが、私が想像したのはデビュー当時の手越くんだ。入所間も無くのメジャーデビュー、CDジャケットの「欠席した人みたいな立ち位置」。手越くんはずっと、なにもできない無力感を抱えていて、当時のそれを今でも忘れていないのかもしれない。
 
それでも今の手越くんは、きっと笑顔で「君がいるから幸せ」と歌う。Interludeで語ってくれたような、ファンの存在に対する揺るぎない信頼が今の手越くんにはある。そして私たちに「感謝」と歌い、「君に幸あれ」と祝福するのだ。そんな『希望〜Yell〜』のサビ終わりの歌詞に合わせ、繋いだバトンを同じ曲に綺麗に返したところで曲は終わる。
 
 
 
 
 
この四者四様のエールのうち、どれがその人に一番響くかというのは、(状況によって都度変わりうるが)NEWSのどんなところが好きか、みたいなものも大きく影響してくるように思う。
 
 
 
そして私に一番刺さったのは、やはり加藤さんパートだった。
 
最初に歌詞カードを見たとき、率直に「わたしの話が書いてある」、と思った。なんでわかったんだろう?と思った。加藤さんのラジオを聞いていて、他の人のおたよりに対するコメントに心救われ、大切に何度も何度も反芻してきたこと。幾度となく加藤さんの「わかるよ。」に救われ、思わず涙を流すような経験をしていること。
 
私には、なにか書き残しておきたいことがあったときに開くノートがある。もちろんその中には加藤さんからもらった言葉が多くある。中でも印象的だったのは、ラジオで「好きなことを始めたいけど親に止められる」みたいな悩みに答えた回だった。

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「作家が天職なんてことはない。
でも書くことを好きになれたことだけは才能だと思ってる。
好きなものが多くあるのも才能だし、
やりたいことをやれているのは運でもあるけど、
それも運という才能だったと思うんだよね。
好きなことをやって満たされる以上の幸せがあるのかな?
心を満たしてくれるものというか、
それ以上の幸福はないだろうと僕は思いますけどね」
 
 
多分人より好奇心が強い私は、これまで趣味でもなんでも、いろんなことに興味を持ってハマってきた。けれどその裏には「なにかこれ!っていう才能を見つけたい」という願望があって、なにをやっても結局は器用貧乏だな、というコンプレックスも消えなかった。それを、ものの数分で加藤さんは消したのだ。「好きなことがあることが才能」という言葉ひとつで、わたしのコンプレックスは綺麗さっぱり消え、自分の中にあったなにかがものすごく救われて、気づいたら泣いていた。当時の言葉を借りるなら、「自分というパーソナリティを全肯定されたような気がした」のだ。それからは好奇心強め、という自分の性格を「自担と一緒〜!」くらい前向きに捉えるようになった。アイドルの言葉一つで、人生が変わると言うことも、いつもの景色が違って見えるということも、本当にあるのだ。
 
 
 
 

 クローバーを聞いたときの気持ちは、冗談ではなくこの通りだった。一曲通して聞き終えた後も、加藤さんからもらった言葉が、一際残響のように心にこだましていて、加藤さんが目の前で自分の両手を握って「ずっと一緒にいるから」と言ってくれている気がしている。「希望を手放さないで」「絶望に手を出さないで」「僕らの手を握っていて」「そのぬくもりを忘れないで」。それは私にとって、加藤さんとの新しい約束になった。

 
加藤さんの言葉を書き留めたノートが大切であるように、これからこの曲も私にとって、ふとしたときに取り出して眺めたくなるようなお守りになるのだろうと思う。
 
もらったクローバーを押し花にして、私自身の物語ーーSTORYの栞にするように。
 
 
 
 
 
 

16.NEW STORY

『STORY』の最後を飾るフィナーレ。
しかしその歌い出しは決して明るいものではない。
 
「何度夢に敗れ 夢にはぐれここまで来ただろう」
ここまで、ファンの「夢」を組み込んだ曲もあった。それを応援するような曲もあった。しかしNEWSは夢に敗れ、夢にはぐれる。なぜならそれがNEWSの「リアル」だからだ。決していいことばかりではない道を歩き、ファンやメンバーやさまざまな存在と支え合いながら、生かし、生かされ、生きていく。生きていく限り、そこにはSTORYが生まれる。そしてそれは私たちにも言えることで、「生きていく一度きりの物語が君のSTORY」だとNEWSは歌うのだ。どこまでも誠実であり、謙虚であり、ときに泥臭く、決して諦めない強さを持っている4人。ここまでのアルバムで語られてきた言葉、NEWSの姿勢が、すべて詰まった歌詞だと思う。
 
 
そして、心にまっすぐ届く、飾り気のない長調のメロディー。
音楽に詳しくないので明言できないが、この曲を聴いて「どこかで聞き覚えがある」と感じるのはこのコード進行にも起因しているように感じる。サビ頭の「何度」はKing&Prince『シンデレラガール』の「君は」と同じ音。また、Bメロからサビのトラックの盛り上げ方、音の入り方は『トップガン』とよく似ている。つまり「ド」がつくメジャーなアレンジ。こういう音であることが、ポジティブ100%ではない歌詞にも関わらず、明るい未来を予感させるようなナンバーに仕上がっている所以ではないかと思う。
 
 
ここで言及したいのは大サビの「人に言えないこと 言わないこと 胸にあるだろう」という歌詞だ。
 
そう、思い出されるのは一曲目、『STORY』の冒頭である。
 
「胸に抱えたSTORY 誰にも言えずに 行き場所なくしても」
 
タイトルは言わずもがなだが、この歌詞、そして編曲にストリングスが多用されているのも『STORY』と『NEW STORY』の大きな共通点。
 
つまり、このアルバム(ソロを除く初回盤の構成)は『STORY』と『NEW STORY』で円環を成すようにできているのではないか。

f:id:bagle00:20200329184120j:plain 『NEW STORY』まで行って、『STORY』に回帰する。

 
円は始点と終点がない、「永遠」を象徴するモチーフである。
私はどうしてもこの繋がりに一つの隠されたメッセージを感じてしまう。
 
『STORY』には終わりがないーーー”物語は終わらない”
 
 
 
アイドルとは終わらない物語である、と私は常々思っている。起承転結の「承」と「転」を永遠に繰り返して、日々更新されていく物語。だからこそどんなシリーズものの漫画のように次が見たいと思うし、次の展開を見るために自分も貢献したいと思う。そんな物語性こそがアイドルの魅力で、その物語が極めてドラマティックなのがNEWSというグループなのだとすれば、「物語は終わらない」とは、まさにNEWSの未来に対する「願い」のようなメッセージだ。
 
 
 
 
 
 

17.戀

『weeeek』『U R not alone』など数々のヒットナンバーを提供してくださった、GReeeeNからの楽曲提供。2019-2020のドームツアー『EPCOTIA ENCORE』で、3曲目にも関わらず『U R not alone』で涙を流していた増田さんが記憶に新しい中、再びGReeeeNからの楽曲提供ということにはまたひとつストーリーを感じてしまう。
 
今回に限って拡散OKとのことなので、ファンブログのスクショを引用する。

HIDEさんが「戀」について
語ってくれています💛#STORY #NEWS #増田貴久 #戀#GReeeeN #HIDE pic.twitter.com/U4HOgTQySt

— たまこ♪Ⓜ️STORY🍀戀 (@tmk_mass) 2020年3月3日

 

なぜだろう、このブログを見て、私はかなり反省した。
 
 
 
私にとって増田さんは最も遠いメンバーだった。
 
赤裸々なエッセイを書く加藤さんやいつでもありのままの手越祐也でいる手越くん、意見を求められれば常に自分自身の言葉で語ってくれる小山さんと比較して、いつでも「みんなのアイドルまっすー」で在り続ける増田さんは、「素の増田貴久」をほとんど覗かせてくれない(もちろん、他のメンバーの「見せてくれる素」はあくまでも「見せてくれる素」だという前提は揺るがない)。だから、常に笑顔でキャラクターを作っている増田さんを見ると、疲れないのかなぁとか、今何を考えているんだろうなぁと思ってしまう。自分との共通項も少なく、底が見えない。わからないから難しい。難しいから触れないでおこうと感じてしまう。そのために、私自身、Twitterなどで増田さんに言及することが少なかった。
 
しかしながら、増田さんも当たり前に”人間”なのだ。ステージという場所に、アイドルという職業に、並々ならぬこだわりを持った一人の人間。私は増田さんという人間に対して、きっとどこかで"想像すること"を放棄してしまっていた。それをハッと気づかされたのが、「ライブが終われば増田さんだって帰宅の途につく」というこの一文だった。
 
 
 
曲は海を想起させる鴎の鳴き声と、月の光のようなシンセから始まる。
 
「なんでもない僕から どうやらなんでもなくない君へ」
世間一般から見て、これといって特別ななにかがあるわけでもないありふれた人間の僕。でも、そんな僕にとって君は「特別」であるということに気づいてしまった。恋心に気づいてしまったんですね。友人に「〇〇のこと好きなの?」って聞かれて反射で「いや別になんとも思ってないよ」って言ってしまうように、自分の中で自問自答を繰り返した結果の「どうやらなんでもなくないな…」なのかもしれない。
 
「月が綺麗な夜だから」はお馴染みの夏目漱石の逸話から。「いとしいとしというこころ」、恋心が胸を締め付ける理由にしているようでいて、それすらも「I Love you」の意味を持つのだから皮肉だ。
 
最後のサビではメロディーが変化して、普段NEWSでは手越くんに任されることが多いような音域を増田さんが歌っている。ライブでこのキーを一生懸命に出す増田さんの姿が目に浮かぶようで、その必死さが、「明日も逢いたい」と募りに募った恋心とリンクして、また胸に響く。ファルセットじゃないことによって「なんでもなくない」「逢いたい」が強く発語されていて、それが「僕」にとって本当に重要なことなのだとわかる。歌ってすごい。
 
 
さて、この曲はソロ一番手、通常盤では『NEW STORY』の次に収録されているが、この構成は本当に絶妙である。ライブで確実に最後に披露されるであろう『NEW STORY』の直後に収録されていることによって、私たちもまさに「ライブ終演後」のような気分でこの曲を聞くことになり、「ライブ後、一人家路につく増田さん」という世界観にすんなりと入ることができるからだ。『STORY』は本当に、今まで以上に計算し尽くされたアルバムだと思う。
 
また、「from NEWS to ファン」の色が強いこの『STORY』というアルバムで、唯一増田さんだけがソロの作詞作曲に携わっていない。しかしその事実がまた、「他の人が思い描く増田貴久こそが増田貴久らしさである」という彼のアイドルとしての矜持を強く感じさせるように思う。
 
 
 
 
 
 

18.Narrative

加藤さんが語る「シゲシゲしさ」というのは、言い換えれば比喩に比喩を重ねた「言葉の武装なのではないかと思う。巧みに言葉を操り、見せたいものを隠喩でもっと綺麗に見せたり、ぼかしたりする。『クローバー』の歌詞とは対照的なその芸が凝縮されているのがこの『Narrative』だ。この曲については別記事にしようかとすら思ったが、せっかくなので書いていこうと思う。
 
 
 
 
私はこの曲を、いわゆる「執筆」についての歌だと思っている。
 
 
 
「白雪の上 羽ばたく残像
ヤドリギの夢 どこまでも遠く」
冒頭から最初の「Narrative」までは、白い紙にペンで文字を書いていくという執筆の象徴的なワンシーンを、さまざまな角度から情景描写していると考える。「白雪の上」、は真っ白な紙のこと。「羽ばたく残像」は、まだ言葉を与えられていない、輪郭の曖昧なイメージやインスピレーションのことではないか。ヤドリギは「寄生木」という名の通り大木に寄生して緑の玉のような見た目に生長する半寄生植物。真冬でも枯れない常緑樹であることから縁起がよいとされ、古来からケルト神話、クリスマスの逸話など伝説に多く登場してきた。ここでは白雪の上、という舞台設定があることから、一面の銀世界の中で唯一色を持った緑のヤドリギ、という風景を想像した。それはつまりまだ何も描けていない物語を紡ぐ上での手がかりになる「色」だ。綴ろうとするものの概略図、それはまだ遠く、見えない。
 
 
「漂う砂 拾い集めて…」
ここからは、綴る、という行為がいかに繊細な営みであるかが語られる。水面の上に漂う砂を拾い集める。そのきらめきに糸を通して紡いでいくような、途方もない作業。それでも手を動かし、インクを滴らせて書き進めていく。そこに「言葉」は舞い踊る。
 
Narrative——のリフレインのあと、楽曲はピッチを落とし、一段深いところに潜っていくような展開を見せる。ここからは、執筆する加藤さんの視界の風景ではなく、その加藤さんの心の声が描かれる。
 
 
「委ねた隙間に 生まれたStory
不意に閃き 突然変異に恋し」
ここはNEWSファンの「考察」のことを歌っているのだろう。この曲のように加藤節が炸裂していた『NEVERLAND』でのソロ・『あやめ』の解釈が盛り上がったためか、事実加藤さんは『EPCOTIA』あたりからソロに関してもアルバムの世界観に関しても「みなさん自由に想像してください」と解釈を受け手に委ねてくるようになった。その解釈の中には、作り手の思惑とは違うものも多くあっただろう。しかしそれを加藤さんは面白い、と思ってくれた。予想だにしなかったStoryに、突然変異に恋した。
 
「「あなたの風になりたい」」
女声のコーラスが重なる、鍵かっこつきのフレーズ。紛れもない私たちファンの台詞である。一つの楽曲に対していろんな考察を重ねることも、いろんな感想をツイートすることも、すべてはNEWSに風を送りたいがためだということが、加藤さんにも届いていた。
 
「予定調和じゃwack like デウス・エクス・マキナ
デウス・エクス・マキナ、「機械仕掛けの神」。古代ギリシャの演劇で頻繁に用いられた、物語が錯綜したときに超越的存在の神が現れて場を収束させるという手法である。つまりどんなに内容がとっ散らかったとしても無理やり解決させることができる夢オチのような演出だ。そんな予定調和じゃつまらない、と加藤さんは前述の解釈による突然変異を肯定する。
 
「奏でる熱狂 列島絶叫 反動禅問答」
これはNEWSのライブツアーのことを指していると見てよいだろう。日本中で熱狂を生み出していく、コンサートで何万人からの歓声を浴びる、それに反比例して加藤さんの中では前作『世界』のような思考が繰り広げられる。この一つ前の「Yea Ima Liar  Where is sense of wonder ?」(とはいえ僕は嘘つきだ 感性はどこにある?)はこっちにかかっていると見てよいかもしれない。もしかしたら加藤さんにとってアイドルであることが当たり前になっていく中で、ライブ一公演で味わう感動も薄れていって、毎回新鮮に感動できた気持ちはいったいどこにいったのか?と自問自答する禅問答…という意味にとれなくもない。
 
「重ねた日々がほら 明かりを灯していく
施す手を痛めてもなお めくるめく運命」
アイドルとしても、小説家としても、続けてきたキャリアは必ず次の未来を切り開いてくれる。今春、短編集が戯曲になって脚本家デビューも果たした加藤さんによる確かな実感。その一方で、私たちにエンターテイメントを与えてくれる加藤さんは施しの手を痛めている。年末にラジオで語った「キャパオーバー」みたいな状態もそうかもしれないし、それ以外に辛いことも多々あっただろう。しかしそれでも加藤さんは、アイドルの魅力に取り憑かれて施しを続ける。ここで思い出すのは、フジテレビの連続ドキュメンタリー『RIDE ON TIME』特集回の最後で加藤さんが言い放ったあの台詞だ。「アイドルやれる人って狂ってるよね」。それもまた、加藤さんの実感なのだろう。
 
 
「白雪の上 羽ばたく残像
降り積もる黒滲む 混ざり合うライン」
ここで、冒頭のフレーズに戻ってくる。しかし歌い出しとは異なり、今は真っ白だった紙の上に黒=綴った文章が降り積もっている。混ざり合うライン、というのも文字のことだろう。線の交わりで意味をなす不思議な記号。
 
「もてあます衝動 語り尽くせる者
「未完成の声届けて ページを開いていく」
これを書きたい、という衝動に形を与えられるのは己しかいない。だからこそ「その目で見たものをひたすらにとき放て」と自らを鼓舞する。届けるのが「未完成の声」なのは、読み手が読んで初めて完成するものだから、ということかもしれないし、綴り方に完璧な正解、完成なんてないからかもしれない。なにかを生み出すとき、完成した瞬間に「もっとこうできたな」という反省が生まれて、それが次をつくるモチベーションになるということがしばしばある。だから完成品すら、自分にとっては永遠に「未完成」で、だからこそ生み出し「続ける」ことができる。加藤さんは語り続けるのだ。
 
 
 
Narrativeとは、「おとぎ話」のイメージが強い「Story」に対して、「自分語り」のようなニュアンスを持つワードである。であれば、『Narrative』というこの曲は間違いなく「物を書く」ということ、そして加藤シゲアキという人についての「ものがたり」なのだろう。ドキっとするようなワードも多かったけれど、その物語の中に「風になりたい」ファンという自分が登場したことが、私はちょっと嬉しかった。
 
 
 
 
 
 

19.STAY ALIVE

前作のソロ『Going that way』、EPCOTIA ENCOREで披露した『DANCIN’ TO ME』に引き続きゴリゴリのEDM。小山さんはすっかりEDMを自分のものにしたんだなと思った。増田さんはダンスチューンを歌っていた頃もあったが、最近は歌やRAPに主軸を置くことが多いし、加藤さんは作詞作曲が持ち味で、実のところ今のNEWSにソロでEDMをやれる人、似合う人は小山さんしかいない。抜群のスタイルを生かしたダンスに、ライブ中誰よりも言葉で観客のボルテージを上げてくれる煽り、ジャニーズJr.とのコミュニケーションなど、ライブにおける「小山慶一郎」の魅力を存分に発揮できるのがこういうアップテンポな楽曲であるというのも事実だ。
 
今作は特にHardwellみたいなエモーショナルさもあるEDMに寄せているように感じるサウンドで、STORYのライブ中、この2分40秒だけ会場がULTRA JAPANになるんじゃないか、というくらいにはダンスミュージックの要素が強い。小山さんはライブでいつも「嫌なこと忘れに来たんだろーー!!」と言うけれど、私たちになにもかも忘れて盛り上がってもらうために小山さんが用意した時間が、彼流のParty Rock Anthemであるこのソロなのかもしれない。
 
一方で、今作は小山さんが作詞に名を連ねているということも忘れてはならない。
「I was alone」「孤独の最果て」「出口のない winding road、並ぶ言葉は決してポジティブなものばかりではない。
 
しかし、そんな孤独や挫折を感じさせる言葉に続くのは、このアルバムで一貫して語られてきたような、ファンへの想いだ。
 
「あなたのヒカリになりたい」
「それでもあなたの声の呼ぶ方へ」
「共に寄り添って前に進みたい」
「Everytime you are staying with me」…。
 
 
NEWSが特集されたフジテレビの連続ドキュメンタリー『RIDE ON TIME』。小山さんの活動自粛から15周年ライブまでの道のりを追った第1回のタイトルは”still alive”、カウントダウンライブEPCOTIA ENCOREの様子を映した第3回のタイトルは"stay gold"だった。第3回の最後でコメントを求められた終演直後の加藤さんと小山さんは「アイドルやれる人って狂ってるよね、」と笑い、それでも続けますか?という質問に間髪入れず「もちろん」と答える。
 
その不敵な笑みを見たとき、私は心の底から嬉しかった。普通に生きていたら経験するはずのない誹謗も中傷も受けて、死ぬほど辛い思いをたくさんしてきたはずなのに、これからもアイドルでいると言い切ってくれたことが救いだった。大好きな人たちが仕事にそう言い切れるだけのやりがいを感じられているのだということ、私がこれからもアイドルの彼等を応援していいのだと思えたことが幸せだった。
 
第1回と第3回のタイトルを掛け合わせたようなこの『STAY ALIVE』は、あのときの小山さんの「もちろん」に値するメッセージだと私は思う。決して明るいことばかりではないこの道を進み続ける。なにがあっても、”アイドル"として生き続ける。そんな「闇夜も I stay alive」という約束だと。
 
 
 
 
 

20.プロポーズ

真っ白なチャペルに青い空、どこからか降ってくる白い羽根、鐘を鳴らして飛び立っていく白い鳩………。プロポーズどうこうをすっ飛ばして挙式の風景が脳裏に広がるような、多幸感に満ちた一曲。雑誌で「いつも失恋の曲が多いから、ファンの子に自分のハッピーになってもらえる歌をつくろうと思って『プロポーズ』にした」と語っていた手越くん。つまり、この曲は最初からファンに自分視点で受け取ってもらうために作られているのだからすごい。誰がなんと言おうとその聞き方が”正解"なのだ。
 
その点においてこの曲が優秀なのは「具体的なエピソードが何も歌われない」というところである。いわゆる結婚ソング界の中で、Official髭男dismですら初めて喧嘩した夜の涙について言及しているし、ブルーノ・マーズなんてテキーラ飲んで近くの教会に行ってるのに、この曲は大部分が「雨の日も風の日も」…みたいなプロポーズのメッセージになっていて、「あの日公園で…」のようなそこに至るまでの経緯はほとんど描かれない。
 
かろうじてそれらしい「出会ったあの日 何も僕は出来なかった」という歌詞も、(ここでは単純に相手に出会った日、という文脈だと思うが)『クローバー』の手越くんパート「あの日 僕ら偶然出会い 〜 ひとり僕じゃ全然できないことばかりだったけど」とリンクし、アイドルの手越祐也と『プロポーズ』を歌う手越くんとをシンクロさせる。
 
あるいは「『もう、大丈夫、味方だよ』その一言で〜」もエピソードのような部分だが、これもコンサートのうちわでしばしば見かける文言(ex.「ずっとNEWSの味方」)であり、「アイドルの手越祐也」から決して人格をブレさせない
 
 
聞き手の知らない具体的なエピソードがないからこそ、私たちはその過程を自由に想像で埋めることができ、どこまでも「アイドルの手越くんと私」の文脈でこのハッピーエンドを体験することができる。『プロポーズ』はもはや「推しと結婚する」という夢女の願望を叶えた究極の一曲と言っても過言ではない。
 
 
雑誌では「テーマをプロポーズにしたのはいいものの、プロポーズしたことないからイメージするのが大変!」とも語っていた手越くん。
パブリックイメージの手越くんはプロポーズどころかいろんな順番を間違えてデキ婚しそうなタイプに見えているのかもしれないが、私たちの知る無邪気でロマンチストな手越くんが想像したプロポーズは結果「お願い ずっと一緒にいてください」「これからもどうぞよろしくね 僕を」という超謙虚な”お願い"であり、告白のセリフは「僕と付き合ってください!」なのである。いかに他と被らない歌をつくるか、というのが重視されつつあるような昨今のJ-POP界において、ここまでど直球な言葉を並べた歌をつくるのは正直手越くんぐらいではないかと思う。エピソードも含めて、あまりにも愛おしい。
 
 
 
そして、この曲がソロの一番最後、通常盤の締めであることも重要な意味を持つと私は思う。この曲を聴いたあとの圧倒的多幸感、そして、プロポーズを通して伝えられる「そばにいるよ」という宣誓これこそが『STORY』を通してNEWSが届けたかったものに近いと思えるからだ。涙でもエモでも興奮でもない、染み渡るようなあたたかい「幸福」。そんな後味を遺せるからこそ、この4曲の中で、『プロポーズ』が一番このアルバムの最後にふさわしかった。
 
さらに言えば、『NEW STORY』の項で述べたような『STORY』への回帰がこの曲でも成功する。一曲を通して響き続けるクラシカルなストリングスの音色と鐘の音。鐘と言えば…は少しこじつけだが、『STORY』のサビでは繰り返し「Ring a Ding Dong」と歌われてもいる。アルバム名に合わせたと思われるCメロ「2人でつくるSTORY」の「STORY」は歌詞中唯一出てくる英単語だ。いずれにしろ、背表紙を閉じるような余韻とともに終わる『プロポーズ』は、また光が射すようなストリングスの音から始まる『STORY』のイントロへと導いてくれるのだ。初回限定盤だけでなく、通常盤でソロまで聞いた状態でも、また自然に一ページ目を開けるような構成の妙。通常盤をお持ちの方は、ぜひSTORYをくり返して聴いてほしい。
 
 
  
 
 
 
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おわりに

 

私は今回、『STORY PROJECT』と題して開催されたファン参加型企画に、どちらかといえば拒否反応を示していた。負けず嫌いが祟って結局企画には応募しなかったし、ラジオでファンの声が使われた曲を聞いた際には正直「口に合わない」と思ってしまった。
 
しかし、STORYを聞き終えた今は、ファンの存在をより強固に感じてアルバムのメッセージに落とし込むため、そしてファンの気持ちに寄り添うためのエビデンスとしてあの音声やエピソードが必要だったのだろうと思う。
 
 
 
STORYプロジェクトで音声の募集がはじまったとき、私のタイムラインでは「将来の夢なんて、NEWSと叶えたいこと以外ない」という呟きが散見された。「五大ドームツアーがしたい」とか「紅白に出てほしい」とか、NEWSの成功こそが自分の夢だと。
 
きっとそれでよかったのだ。自分の将来の夢はもちろんのこと、NEWSと叶えたい、という文脈での「夢」も彼等が求めていたメッセージのひとつなのだと、初回限定盤特典の映像を見て確信した。『STORY RADIO』で4人それぞれに向けて「結婚したい!」みたいなメッセージを聞くNEWSの笑顔は、どこまでも幸せそうだったから。
 
 
FC会員数38万人。
売り上げ12万枚。
途方もない数字だ。途方もなさすぎて、そこに個人の姿は見えない。
 
 
私はコンサートに行くたびに「NEWSのファンってこんなにいるんだ」と驚く。失礼かもしれないけれど、普段は狭いインターネットの世界で数百人程度のファンしか見えていないから、いざ同じ場所に集った何万という人々がみんな自分と同じものを好きなのだと思うと、毎回新鮮に感動してしまう。
 
 
きっとNEWSにとってもそうなのだ。
大きすぎる数字ではなく、街でツアーグッズを身につけている人を見たときや、コンサート会場でファンに囲まれているときこそが彼等が最もファンの存在を実感できる瞬間で、だから彼等はロゴや、声や、エピソードを通して、自分たちのそばにいてくれるファンの存在を感じようとしたのだと思う。『STORY RADIO』で山と積まれたファンから届いたエピソードを愛おしそうに撫でる手越くんの姿がそれを物語っていた。言うなれば、ファンの「見える化」である。より強くファンの存在を感じることで、ファンに向けた曲に説得力を持たせたかったのだと思う。
 
 
そして同時に、募集したエピソードからファンが自分たちに対してどのような思いを抱いているか、自分たちがどんな価値を与えられているかを真摯に汲み取って、『クローバー』のような曲に落とし込んだ。彼等の憶測ではなく、ファンの具体的なエピソードに基づいて応援歌を作った。その誠実さはなんともNEWSらしい。
 
 
 
 
 
 
NEWSの魅力を聞かれたとき、私は「人間であるところ」と答える。
ときに躓き、湿っぽく涙し、やりがいなくしては働けない、意思を持った人間。だからこそ私は彼等に自分を重ねられるし、強く感情移入できるし、心から惚れ込めるし、必死になれる。
 
 
 
 
「人」という字は人と人が支え合って…とは、日本人なら一度はどこかで聞かされたであろう金八先生の言。
 
 
支え合って生きていくこと。
そばにいること。
愛し合うこと。
 
 
 
それは、隣り合う誰かに限らず、真に互いを知らない「アイドル」と「ファン」という関係値においても可能なのだということを、NEWSは証明する。
 
 
 
 
 
 

 

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*1:10周年の作詞曲『愛言葉』から